はじめに
このブログ記事は、筆者がソムリエ/ワインエキスパート二次試験(ワインテイスティング)を勉強した経験をもとに、そのポイントをまとめたものです。
テイスティングは個人個人の感じ方や嗜好(好み)による違いもあるため、必ずこうですという正解もない世界だと思います。そのため、本ブログの記載内容はあくまでも個人の経験に基づく見解(試験対策上のポイント)となりますことをあらかじめご承知の上、ご参考ください。
二次試験用テイスティングの基本
試験では外観→香り→味わいと1回通して行ってから、マークシートの記入を行うようにしています
向き合ったワインの大枠を把握してから記入することで一貫性のある解答をすることができ、また時間の節約(特に香りの評価を先に記入した後に味わいを評価すると、香りの評価を振り返って修正したくなることが多い)にもなると考えます
用語解説
✅小項目のカッコ内の数字は選択数を示しています(香りの特徴の項目は、課題ワイン毎に選択数が変わりますので、ご注意ください)
✅CHECKボックス内の選択肢は2023年度のJ.S.A.呼称資格試験のテイスティング用語選択用紙を参考にしています(選択用語は毎年少しずつ変わっているため、試験本番で初登場する用語もあります)
✅選択肢の右横のガイドは以下の基準でガイドしています(あくまでも経験則です)
●第1 よく選ばれる選択肢(第一候補として選択する。また、迷ったらこの中から選択する)
●第2 時々選ばれる選択肢(第二候補として、ある程度手がかりがあれば選択する)
●レア ほとんど選ばれない選択肢(強い確証があるときのみ選択する)
●NG まず選ばれることのない選択肢(試験では選択しない)
✅鉛筆マークのボックスには、具体例や注意点などを示しています
テイスティング用語選択のポイント
外観
清澄度(1)
1.澄んだ 第1
2.深みのある 第2
3.やや濁った レア
4.濁った NG
ワインの透明度を確認します。清澄度はワインの健全度を表し、健全なワインほど澄んだ外観となります
赤ワインの場合、外観に違和感なければ、まよわず『澄んだ』を選択する
明らかに色の濃いワインの場合、『深みのある』を選択することもありますが、
まよったら『澄んだ』を選択するようにしています
輝き(1)
1.輝きのある 第1
2.落ち着いた 第2
3.モヤがかかった NG
ワインの「照り」「つや」を確認します。輝きは酸度と関係があり、酸度の高いワインほど輝きのあるワインとなります
『輝きのある』を基本とし、熟成が感じられるワインなどは『落ち着いた』を選択することもあります
ここも迷ったら『輝きのある』を選択するようにします
色調(2)
1.紫がかった 第1
2.ルビー 第1
3.ガーネット 第1
4.オレンジがかった 第2
5.黒みを帯びた 第2
6.ラズベリーレッド 第1
7.ダークチェリーレッド 第1
8.レンガ色 レア
9.マホガニー レア
10.縁が明るい 第2
色調はワインの若さ(熟成度)と関係し、若いワインほど紫の要素が強くなります
色調は次の2つ選択肢を選ぶようにしています。まず色調の程度を選び、次に実際の色を選びます
1)色調の程度:『紫がかった』、『オレンジがかった』、『黒みを帯びた』、『縁が明るい』から選択し、それぞれの判断基準は以下の通り
・『紫がかった』:若いワイン
・『オレンジがかった』:縁にオレンジのニュアンスのある、やや熟成の段階に入ったワイン
・『黒みを帯びた』:明らかに黒みを帯びているワイン(マルベック、シラーズなど)
・『縁が明るい』:上記3つに、いずれにも該当しない場合
縁がオレンジがかっていることの多い品種として、サンジョヴェーゼ、テンプラニーリョ、ネッビオーロがあります
2)実際の色:『ルビー』、『ラズベリーレッド』、『ガーネット』、『ダークチェリーレッド』から選択し、ルビー<ラズベリーレッド<ガーネット<ダークチェリーレッドの順で色調が濃くなります
それぞれの色調のイメージはだいたい以下の基準を参考に
・『ルビー』:明るいピノ・ノワール、ネッビオーロ、マスカットベーリーA
・『ラズベリーレッド』:やや明るいピノ・ノワール、ネッビオーロ、マスカットベーリーA、ガメイ、メルロー(日本)
・『ガーネット』:やや濃いガメイ、メルロ、テンプラニーリョ、サンジョヴェーゼ、シラー
・『ダークチェリーレッド』:濃いカベルネソーヴィニヨン、シラーズ、テンプラニーリョ、メルロ
『レンガ色』、『マホガニー』は試験課題ワインとしては出題されないと考えてよいと思います
以前は『ルビー/ラズベリーレッド』、『ガーネット/ダークチェリーレッド』の選択肢でしたが、昨年からそれぞれ4つに分割されました
ただし、それぞれセットで正答となっていることが多いため、そんなに悩む必要はないと思います
濃淡(1)
1.無色に近い NG
2.明るい 第1
3.やや明るい 第1
4.やや濃い 第1
5.濃い 第1
6.非常に濃い 第2
ブドウの成熟度合い、抽出度合い、ワインの濃縮感を推測できます
濃淡はワイン産地の気候と関係があることがあります。冷涼な産地のワインは淡い色調、温暖な産地のワインは濃い色調となることが多いです。ただし、醸造法などの違いで濃淡に違いが出ることもありますので、注意が必要です
濃淡はグラスを真上から覗いた時に、脚の付け根の丸い部分(グラス上部との接地部分)が透けて見えない場合は『濃い』とし、かすかに見える場合は『やや濃い』、はっきり見える場合は『やや明るい』、明らかに明るい場合は『明るい』と判断するようにしています
赤ワインの場合、『無色に近い』は無視しても良いと思います
『非常に濃い』と感じても、試験的には『濃い』を選択しておいてよいと思います(正解には幅があることが多々あるためテクニカルに『濃い』を選択した方が無難)
粘性(1)
1.さらっとした 第2
2.やや軽い 第1
3.やや強い 第1
4.強い 第1
グラスの壁面をつたう滴の状態を判断します。粘性はアルコール度の高さや、甘辛度ど関係があります
軽くスワリングをした後に、壁面をつたう滴がサラッとしているか、トロっとしているかを見るようにします。アルコール度が低いほど、辛口ほど粘性は低く、アルコールが高いほど、甘口ほど粘性は高くなるので、味わいの項目のアタック、ボリュームと整合するように確認しています
ただし、当日のグラスの状態(洗い方や新しいか古いかなど)にも影響を受けることがあるので、赤ワインの基本は『やや強い』とし、味わいの項の【甘み】、【アルコール】とも整合するようにします
外観の印象(2)
1.若々しい 第1
2.若い状態を抜けた 第1
3.軽快な 第2
4.成熟度が高い 第1
5.濃縮感が強い 第1
6.やや熟成した 第1
7.熟成した レア
8.酸化熟成のニュアンス NG
9.酸化が進んだ NG
10.完全に酸化している NG
ブドウの成熟度や凝縮感、ワインの熟成度合いなどを推測します
通常2つの選択肢を選ぶことになります。その際に1つはワインの熟成度合いを評価し、1つはワインの凝縮感やブドウの成熟度を評価するようにします
1)ワインの熟成度:『若々しい』『若い状態を抜けた』『やや熟成した』
紫のニュアンスを感じたら『若々しい』、縁がややオレンジがかっていたら『若い状態を抜けた』、明らかにオレンジのニュアンス(あるいは熟成感)を感じたら『やや熟成した』を選択します
『熟成した』は試験にほとんど出題されないと考えます
2)ワインの凝縮感、ブドウの成熟度:『軽快な』『成熟度が高い』『濃縮感が強い』
色調が明るくチャーミングな味わいのワインは『軽快な』、開いていて果実味豊かなワインは『成熟度が高い』、果実味の凝縮感を感じる濃いワインは『濃縮感が強い』を目安に選択します
『酸化』を含んだ選択肢は試験には出題されないと思っています
香り
第一印象(2)
1.閉じている レア
2.控えめ 第2
3.開いている 第1
4.チャーミングな 第1
5.強い 第1
6.華やかな 第2
7.凝縮感がある 第1
8.深みのある 第1
9.複雑な 第2
香りをとった時の第一印象を評価します
通常2つの選択肢を選ぶことになります。その際、次の2つに分けて1つずつ選択するようにします
1)香りの程度:『控えめ』『開いている』
まずはスワリングをしないで香りをとり(※)、その時の印象で香りの程度を『控えめ』か『開いている』かで評価しますが、赤ワインの場合は基本『開いている』とし、明らかに香りの弱い場合は『控えめ』を選択します
※最初からスワリングをしてしまうと、閉じているワインや控えめなワインも華やかに感じてしまうことがあるため
2)香りの強さ/質:『チャーミングな』『強い』『華やかな』『凝縮感がある』『深みのある』『複雑な』
次にスワリングをして、香りを良くとり、香りの強さや質を評価します
基本は赤ワインの多くが当てはまる『強い』、『凝縮感がある』とし、それ以外はだいたい以下を目安として判断しています
『チャーミングな』:軽めのワイン(日本のメルロ、若いピノ・ノワールなど)
『華やかな』:果実や花の香りを強く感じるワイン(NWのピノ・ノワールなど)
『強い』、『凝縮感がある』:果実味をしっかり感じる凝縮感のあるワイン(基本選択肢)
『深みのある』、『複雑な』:【香りの特徴】の項目で候補がたくさん思い描けるワイン
特徴:果実・花・植物(3~6)
1.イチゴ 2.ラズベリー 3.ブルーベリー 4.カシス 5.ブラックベリー
6.ブラックチェリー 7.干しプラム 8.乾燥イチジク
9.赤ピーマン 10.メントール
11.シダ 12.バラ 13.すみれ 14.牡丹 15.ゼラニウム 16.ローリエ 17.杉
18.針葉樹 19.ドライハーブ 20.タバコ 21.紅茶 22.キノコ
23.ユーカリ 24.スーボア 25.トリュフ 26.腐葉土 27.土 28.黒オリーブ
香りの特徴を果実、花、芳香類に例えて評価します
選択肢がたくさんあり、ワインによって選択数も変わるため注意が必要です
次の4つのカテゴリーに分けて整理して考えるようにしています
果物(1.イチゴ 2.ラズベリー 3.ブルーベリー 4.カシス 5.ブラックベリー 6.ブラックチェリー 7.干しプラム 8.乾燥イチジク)
果物は必ず2つ以上選び、上記の通り赤系果実(#1,2)→青系果実(#3,4)→黒系果実(#5,6)→ドライフルーツ(#7,8)の順に並べて、基本バラバラに選ぶのではなく、連続して選ぶようにします。最も該当する果物を選んで、その前後(あるいはどちらか1つ)を選ぶと2~3選択できます
外観(色調)にも比例するので、色調が淡ければ赤系ベリー(イチゴ、ラズベリー)、濃ければ黒系ベリー(ブラックベリー、ブラックチェリー)、中間であれば青系ベリー(ブルーベリー、カシス)から目星を付けると考えやすくなります
また、縁がオレンジがかっているワイン(熟成段階のワイン)や、オレンジがかることの多いネッビオーロ、サンジョヴェーゼ、テンプラニーリョなどは、ドライフルーツ(干しプラム、乾燥イチジク)が該当します
代表品種の果物のイメージは、だいたい以下の通りです(ワインによって異なります)
・マスカットベーリーA(イチゴ、ラズベリー)
・ピノ・ノワール(イチゴ、ラズベリー、ブルーベリー)
・ネッビオーロ(イチゴ、ラズベリー、ブルーベリー、干しプラム、乾燥イチジク)
・メルロ(ラズベリー、ブルーベリー、カシス、ブラックベリー)
・サンジョヴェーゼ(ブルーベリー、カシス、ブラックベリー、干しプラム)
・テンプラニーリョ(ブルーベリー、カシス、ブラックベリー、干しプラム)
・シラー(ブルーベリー、カシス、ブラックベリー)
・シラーズ(カシス、ブラックベリー、ブラックチェリー)
・カベルネ・ソーヴィニヨン(カシス、ブラックベリー、ブラックチェリー)
花(12.バラ 13.すみれ 14.牡丹 15.ゼラニウム)
花の香りが取れれば1つ選ぶようにします
香りの強さは、弱 すみれ<ゼラニウム<牡丹 強
の順で強くなり、バラは熟成したワインで感じることがあります
ゼラニウムはピノ・ノワール、マスカットベーリーA、ガメイなどの特徴香でもあります
すみれは多くのワインで感じ取れる香りなので、どうしても選択肢が見当たらない場合などに選択することもあります(何でもかんでも、すみれを選択することはあまり推奨はしません)
その他芳香(9.赤ピーマン 10.メントール 11.シダ 16.ローリエ 17.杉 18.針葉樹 19.ドライハーブ 20.タバコ 21.紅茶 22.キノコ 23.ユーカリ 24.スーボア 25.トリュフ 26.腐葉土 27.土 28.黒オリーブ)
その他芳香については、これらのアロマを感じた場合に選ぶようにします
赤ワインの場合は、品種によって強く感じる香りも多いため、1つ以上は選ぶようにします
それぞれの芳香の特徴、該当する主なブドウ品種は以下のようにまとめていますが、出題されるワインによるため、素直にその香りがとれたら選択するようにします(逆に該当品種だと思っても、その香りがとれなければ選択しない)
赤ピーマン:カベルネ系(カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン)、日本のメルロ
メントール:カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーズ、日本のメルロ、マルベック
シダ:NWのカベルネ・ソーヴィニヨン、ネッビオーロ
ローリエ:サンジョヴェーゼ、テンプラニーリョ、グルナッシュ
杉:カベルネ・ソーヴィニヨン
針葉樹:カベルネ・ソーヴィニヨン、ネッビオーロ
ドライハーブ:カベルネ・ソーヴィニヨン、ネッビオーロ、サンジョヴェーゼ、テンプラニーリョ
タバコ:テンプラニーリョ、マルベック
紅茶:ピノ・ノワール、サンジョヴェーゼ
キノコ:テンプラニーリョ、メルロ
ユーカリ:オーストラリアのワインに特徴的な香り。オーストラリアのシラーズやカベルネ・ソーヴィニヨンなど
スーボア:森の下生え。腐葉土に近いニュアンスで、より複雑な香り。テンプラニーリョ
トリュフ レア:キノコに近い香りで、より強く感じた場合に選んでも良いかもしれません
腐葉土:ネッビオーロ、テンプラニーリョ
土:シラー/シラーズ、ネッビオーロ、サンジョヴェーゼ、テンプラニーリョ、メルロ
黒オリーブ:シラー/シラーズ、サンジョヴェーゼ、テンプラニーリョ、グルナッシュ
このうち、多くの赤ワインに共通する(正答率の高い)香りは、土です。どうしても選択肢が思い浮かばない場合や時間がない場合は選択することもあります(何でもかんでも、土を選択することはあまり推奨しません)
特徴:香辛料・芳香・化学物質(2~4)
1.血液 2.生肉 3.乾いた肉 4.なめし皮
5.ロースト 6.ジビエ 7.コーヒー 8.カカオ 9.ヴァニラ 10.黒胡椒
11.丁子 12.シナモン 13.ナツメグ 14.甘草 15.白檀
16.杜松(ねず)の実 17.タール 18.樹脂 19.ヨード 20.ランシオ
香りの特徴を香辛料・芳香・化学物質に例えて評価します
ここも選択肢がたくさんあり、ワインによって選択数も変わるため注意が必要です
次の4つのカテゴリーに分けて整理しています
香辛料・芳香類(10.黒胡椒 11.丁子 12.シナモン 13.ナツメグ 14.甘草 15.白檀 16.杜松の実)
香辛料・芳香類は、その香りが感じ取れたら選択します。必ず1つは選択するようにします
香辛料系は次のようにまとめています
スパイス香はブドウが完熟すると出やすく、ブドウが未成熟だとハーブ香が出やすいと言われています
黒胡椒:スーッとする感じ
丁子(クローブ):スーッとする感じで、苦味のある特徴的な香り
甘草(リコリス):甘い香りとスパイシーな香りが合わさった感じ
ナツメグ:甘い香りと苦い香りが合わさった感じ
シナモン:甘い香り
赤ワインは甘い香りのニュアンスを感じることが多く、甘草、ナツメグ、シナモンで迷うことも多いかと思います。その場合はシナモンを選択するようにしています
芳香類の白檀と杜松の実はレア選択肢と考えてます
白檀:お香の香り。ピノ・ノワール、ガメイ、マルベック
杜松の実:松脂のような樹脂の香り。シラー/シラーズ
樽香類(5.ロースト 7.コーヒー 8.カカオ 9.ヴァニラ 18.樹脂)
樽香類は樽香を感じたら選択します
どの選択肢を選ぶかは難しい所ですが、大雑把に以下の様な感覚です
樹脂:旧世界、樽のニュアンスが穏やかなワイン
ロースト、ヴァニラ:焙煎香(ロースト)や甘いニュアンスのある樽香(ヴァニラ)。新世界、特にカリフォルニアワインでよく正答となります。甘いニュアンスを感じたらヴァニラを優先
コーヒー、カカオ:香ばしさ+苦味を感じる樽香
化学物質(17.タール 19.ヨード 20.ランシオ)
化学物質は積極的に選択する必要はなく、その香りが取れたら選びます
タール:スモーキーな香り
ヨード:磯の香(海苔っぽい)
ランシオ:熟成香のため、熟成を強く感じたら選択
その他(1.血液 2.生肉 3.乾いた肉 4.なめし皮 6.ジビエ)
その他肉系の香りは赤ワインに特徴的な香りです
それぞれの香りと代表的な品種をまとめました
血液:鉄っぽさを感じた場合(ピノ・ノワール、メルロ、シラー/シラーズ)
生肉:野性味のあるワイン(ピノ・ノワール、メルロ、シラー/シラーズ)
乾いた肉:ビーフジャーキーみたいな乾燥肉のニュアンス(カベルネ・ソーヴィニヨン、サンジョヴェーゼ、テンプラニーリョ、マルベック)
なめし皮:第3アロマで、ランドセルの中身の様な革製品のニュアンス(カベルネ・ソーヴィニヨン、テンプラニーリョ)
ジビエ:生肉に焼いた肉のニュアンス(スモーキー)がある場合(カベルネ・ソーヴィニヨン、ネッビオーロ)
香りの印象(2)
1.若々しい 第2
2.嫌気的な レア
3.熟成感が現れている 第2
4.酸化熟成の段階にある 第2
5.酸化している NG
6.第1アロマが強い 第1
7.第2アロマが強い 第2
8.ニュートラル レア
9.木樽からのニュアンス 第1
香りの全体的な印象を、主体となっているアロマ(第1、第2、第3)、品種の個性、熟成の有無、熟成容器(木樽)、熟成の段階などについて分析する
本項目については、赤ワインは白ワインの考え方と異なるので注意します
基本、『第1アロマが強い』と『木樽からのニュアンス』で考えます
これは多くの赤ワインが持つ共通因子だからです
さらに、以下の選択肢は、その要素を強く感じたら積極的に選択します
・若々しい:紫がかった輝きのある若々しいワインと感じた場合
・第2アロマが強い:低温発酵からくるキャンディ香やマセラシオンカルボニックなどからくるバナナのニュアンスを感じた場合
・熟成感が現れている:縁がオレンジがかって、若い状態を抜けたワイン(ネッビオーロ、サンジョヴェーゼ、テンプラニーリョに多い)
・酸化熟成の段階にある:縁がオレンジで、明らかに熟成段階にあるワイン(ネッビオーロ、サンジョヴェーゼ、テンプラニーリョに多い)
味わい
アタック(1)
1.軽い レア
2.やや軽い 第2
3.やや強い 第1
4.強い 第1
5.インパクトのある 第1
口に含んだ時の第一印象を表します
アタックはアルコールのボリューム感(アルコール度数)に比例するため、赤ワインの場合は以下を目安として『やや強い』、『強い』から選択しています
・やや強い:12.5vol.%以下
・強い:13.0vol.%以上
アルコール度が『やや強い』より明らかに軽い場合は『やや軽い』、
『強い』より明らかに重い場合は『インパクトのある』を選択します
本項目はアルコールのボリューム感から判断すると選択肢を絞りやすいため、【アルコール】の項目とも整合するようにしましょう
甘味(1)
1.ドライ 第1
2.ソフトな 第1
3.まろやか 第1
4.豊かな 第1
5.残糖がある レア
ワインの甘辛度を判断します
甘味はアルコールのボリューム感(アルコール度数)も含んだ甘みとなります
次の4つの中から選びます
・ドライ:果実味のジューシーさをあまり感じない場合
・ソフトな:果実味のジューシーさが少ない場合
・まろやか:果実の甘みをやや感じる、アルコール度がやや強い場合
・豊かな:果実の甘みをしっかり感じる、アルコール度が強い場合
まず果実味の甘味を感じるか感じないかで2択に絞り、次に各基準に照らして最終決定します
・果実味の甘味を感じない場合→果実のジューシーさの大小で最終決定(少 ドライな<ソフトな 多)
・果実味の甘味を感じる場合→果実の甘味とアルコール度で最終決定(低 まろやか<豊かな 高)
砂糖の甘みを感じる場合は『残糖がある』になりますが、試験としては出題されないと思います
酸味(1)
1.シャープな レア
2.爽やかな 第2
3.なめらかな 第1
4.円みのある 第1
5.キメ細かい 第1
6.やさしい レア
7.力強い レア
8.ストレートな レア
ワインの個性を表す重要な要素で、ブドウ品種、産地気候条件などと関連があります
酸味は『なめらかな』、『円みのある』、『キメ細かい』から判断するようにしています
これら酸度の強さは以下の順で強くなると考えています
弱 『円みのある』<『なめらかな』<『キメ細かい』 強
赤ワインの基本は『なめらかな』となり、酸味を強く感じたら(冷涼産地の場合も)『キメ細かい』を、酸味を弱く感じたら(温暖産地の場合も)『円みのある』を選択するようにしています
『シャープな』、『やさしい』、『力強い』、『ストレートな』は、ほとんど出題されたことはありません
赤ワインの酸味は、白ワインよりだいぶザックリしている印象です
タンニン分(1)
1.収斂性のある 第1
2.力強い 第1
3.緻密 第1
4.サラサラとした 第1
5.ヴィロードのような 第1
6.シルキーな 第1
7.溶け込んだ 第1
赤ワインのみに存在する評価項目で、タンニンの強さと質を評価します
タンニンは口に含んだ時の収斂性(歯茎がギシギシする感じ)の強さと、舌触り(舌に残るざらざら感)を頼りに判断しています
判断基準は以下のように考えています
複数該当する場合もありますが、その場合は最も強く感じたものを選ぶようにします
『収斂性のある』:タンニンをはっきり感じて、歯茎がギシギシを強く感じる
『力強い』:タンニンをはっきり感じて、歯茎のギシギシを感じる
『緻密』:タンニンを感じるが、歯茎のギシギシ感が弱い
『サラサラとした』:タンニンは弱く、あまり感じない
『ヴィロードのような』:なめらかな舌触りのタンニンを感じる(シルキーより強い)
『シルキーな』:なめらかな舌触りのタンニンを感じる(ヴィロードより弱い)
『溶け込んだ』:タンニンを感じるが舌触りをほとんど感じない
大体の目安として品種ごとに感じるタンニンをまとめました
カベルネソーヴィニヨン:『緻密』『力強い』『溶け込んだ』
ピノ・ノワール:『緻密』『サラサラとした』『シルキーな』
シラー/シラーズ:『緻密』『収斂性のある』『力強い』
ネッビオーロ:『力強い』『緻密』
サンジョヴェーゼ:『緻密』『収斂性のある』『力強い』
テンプラニーリョ:『緻密』『ヴィロードのような』『力強い』
日本のメルロ:『サラサラとした』『溶け込んだ』
バランス(1)
1.スマートな 第2
2.骨格のしっかりした 第1
3.固い レア
4.痩せた、渇いた 第2
5.豊満な 第2
6.肉厚な 第2
7.力強い 第1
8.流れるような 第1
9.ふくよかな 第2
ワイン全体のバランス(酸味とアルコール/甘味のバランス)を判断します
まず評価するワインをライトボディかフルボディか判断します
1)ライトボディ(酸が通っていて、アルコールは中程度以下)
『流れるような』を基本として、だいぶ軽めのワインであれば『スマートな』を選択する
スマートな—流れるような
2)フルボディ(果実味、アルコール、酸、タンニンいずれも高い)
『力強い』『骨格のしっかりした』を基本として以下のワードを選択します
痩せた、渇いた—骨格のしっかりした—力強い—ふくよかな—肉厚な—豊満な
フルボディだけど枯れたニュアンスや果実味がドライな印象であれば、『痩せた、渇いた』を選択
果実味とアルコール度のバランスが強ければ、『ふくよかな』『肉厚な』『豊満な』から選択
『固い』は開いていないワインを表現しますが、課題ワインとしては適切ではないので、出題されないと思います
アルコール(1)
1.軽め 第2
2.やや軽め 第1
3.中程度 第1
4.やや強め 第1
5.熱さを感じる 第1
アルコールのボリューム感を評価します
アルコール度数は常日頃からワインを飲むたびに確認するようにしています
そうすることで、正解の精度を高めることができます
アルコール度数と評価は次のように行っています
赤ワインの場合は『やや強め』のワインが多く出題される傾向にあります
・やや軽め:12.5vol%未満
・中程度:12.5~13vol%
・やや強め:13.5vol%以上
・熱さを感じる:14.5vol%以上
また、他の評価項目でアルコール度数と関連の高い項目はアルコール度数と整合した回答となっているか確認しましょう
粘性、アタック、甘味、バランスの項目など
余韻(1)
1.短い 第2
2.やや短い 第1
3.やや長い 第1
4.長い 第1
飲み込んだ後(口から吐き出した後)の余韻の長さを評価します
基本は『やや長い』と『長い』から選択するようにします
余韻の確認のため、最後に一口飲んでも良いと思います
基本的に酸の強い方が余韻として持続すると思っています
評価など
評価(1)
1.シンプル、フレッシュ感を楽しむ 第2
2.成熟度が高く、豊かな 第1
3.濃縮し、力強い 第1
4.エレガントで、余韻の長い 第1
5.ポテンシャルがある レア
課題ワインを一言で表現します
基本は『成熟度が高く、豊かな』、『濃縮し、力強い』とします
チャーミングでライトボディの場合、『シンプル、フレッシュ感を楽しむ』
酸が強く余韻の長い場合『エレガントで、余韻の長い』を選ぶようにします
評価の項目は複数正答になることがほとんどのため、『ポテンシャルがある』はあえて選ばないようにしています(どんなワインもポテンシャルは持っていて、選ぶ基準が明確でないため)
適正温度(1)
1.10度未満 NG
2.10-13度 レア
3.14-16度 第1
4.17-20度 第1
5.21度以上 レア
ワインの最も適切な供出温度を評価します
赤ワインの場合は、『14-16度』か『17-20度』の基本2択で考えます
それぞれの基準は以下の通りです
・『14-16度』:ライト~ミディアムライトボディのワイン(ピノ・ノワール、ガメイ、カベルネフラン、マスカットベーリーA、日本のメルロ)
・『17-20度』:ミディアム~フルボディのワイン(ネッビオーロ、カベルネソーヴィニヨン、シラー/シラーズ、メルロ、サンジョヴェーゼ、テンプラニーリョ、グルナッシュ、マルベック)
この項目は次のグラスとも連動しますので併せて考えるようにします
グラス(1)
1.小ぶり レア
2.中庸 第1
3.大ぶり 第1
ワインの最も適切な供出グラスを評価します
適正温度で『14-16度』を選択した場合は、『中庸』を選ぶようにしています
適正温度で『17-20度』を選択した場合は、『中庸』か『大ぶり』の2択になります
・中庸:中庸なワイン(ほとんどのワインが該当しますので、まよったらこちらを選択)
・大ぶり:香りが明らかに豊かなワイン(ネッビオーロ全般、一部のテンプラニーリョ、一部のカベルネソーヴィニヨン、一部のシラー/シラーズなど)
『大ぶり』が正答の場合、多くは同時に『中庸』も正答となっていますので、まよったら『中庸』を選択するようにします
デカンタージュ(1)
1.必要なし 第1
2.直前 第2
3.事前(1時間以上前) レア
デカンタージュは基本『必要なし』とします
ただし、グラスで『大ぶり』を選択し、品種がネッビオーロと思った場合のみ『直前』を選択します
収穫年(1)
受講年2年~6年前くらいの選択肢の5択
ワインのヴィンテージを評価します
収穫年は正直よくわかりませんが、大体受講年の2~3年前の正答が多いようです
テンプラニーリョやネッビオーロは、やや古いヴィンテージが出題されることもあります
生産地(1)
1.フランス 2.アメリカ 3.オーストラリア 4.ニュージーランド
5.イタリア 6.スペイン 7.チリ 8.ドイツ 9.日本
ワインの生産地を評価します
この項目は、次のブドウ品種と連動して毎年入れ替わります
チェックボックスの9か国は2023年評価シートの選択肢ですが、その他に
ポルトガル、南アフリカ、アルゼンチンなどもフォローしておくようにします
生産地はブドウ品種と連動するパターンが多いので、確認するようにしましょう
主なブドウ品種(1)
1.ピノ・ノワール 2.ジンファンデル 3.シラー(シラーズ)
4.カベルネソーヴィニヨン 5.サンジョヴェーゼ 6.メルロ 7.テンプラニーリョ
8.グルナッシュ 9.ネッビオーロ
ワインのブドウ品種を評価します
主なブドウ品種は、毎年入れ替わります
チェックボックスの9品種は2023年評価シートの選択肢ですが、その他に
マスカットベーリーA、ガメイ、マルベックなどもフォローしておくようにします
また、出題ワインは必ず単一品種というわけではなく、ブレンドワインも出題されますので、そういうワインも練習しておくようにしましょう(ただし、メイン品種が85%以上のものがよい)
冒頭にも記載しましたが、ブドウ品種の予想から入るのは危険な(大外しをする可能性がある)ので、評価シートの順番にワインを評価し、最後にブドウ品種を選ぶようにすると良いと思います。ただし、ブドウ品種に強い確証がある場合は、そのブドウ品種で選択されることの選択肢を微調整しても良いかもしれません
ブドウ品種ごとの特徴
最後に代表的なブドウ品種ごとの特徴をまとめました
これらはあくまでも参考であって、出題されるワインによって該当しないこともあるので、試験当日はブドウ品種から入るのではなく、ワインに向き合って感じた通りに評価するようにします
カベルネソーヴィニヨン
✅果実はカシス~ブラックチェリー
✅杉、甘草、ナツメグ、樹脂、腐葉土、土
✅チリはピーマン香、オーストラリアはメントール、ユーカリが特徴
✅カベルネフランより色調が濃くなる傾向(見分け方)
メルロ
✅果実はブルーベリー~ブラックベリー
✅甘草、牡丹、針葉樹、キノコ、土
✅酸は強くない(持続しない)
✅日本のメルロは海外のメルロと特徴が異なるため、注意が必要
シラー/シラーズ
✅果実はカシス~ブラックチェリー
✅すみれ、血液、生肉、ジビエ、黒胡椒、メントール(豪)、ユーカリ(豪)
✅タンニンはあるがスーっと引いていく
✅色調は紫がかっていることが多い
テンプラニーリョ
✅果実はブラックベリー~ブラックチェリーと、ドライフルーツ
✅縁がオレンジがかることが多い→干しプラム、乾燥イチジク
✅アメリカンオークを感じることが多い(樹脂、タバコ)
✅乾いた印象(ドライフルーツ、渇いた葉っぱ、乾燥肉など)
ピノ・ノワール
✅果実はラズベリー~ブルーベリー
✅すみれ、牡丹、ゼラニウム、紅茶、なめし皮、シナモン
✅タンニンは緻密(ネッビオーロと判別)
✅果実の香りが強ければNW、香りが落ち着いていたらOWと判断
ネッビオーロ
✅果実はラズベリーと、ドライフルーツ
✅すみれ、バラ、針葉樹、ドライハーブ、タバコ、樹脂
✅縁がオレンジがかることが多い→干しプラム、乾燥イチジク
✅タンニン強い
✅グラスは大ぶり
その他の品種
✅サンジョヴェーゼ:ブルーベリー~カシス、縁がオレンジがかること多い、テンプラニーリョとはアメリカンオークのニュアンスの有無で判断(テンプラニーリョはアメリカンオークのニュアンスあり)
✅マスカットベーリーA:イチゴ、アルコール低め、ガメイは酸味弱いので見極める
✅カベルネフラン:ラズベリー、すみれ、赤ピーマン、熟成させないことが多いため樽香少ない
✅ガメイ:イチゴ、ラズベリー、すみれ、シナモン、酸味少ない(PNやMBAとの違い)