ソムリエ/ワインエキスパート呼称資格認定試験の学習ツールとして、
ワインの伝来マップ〜旧世界編〜をつくってみました!
教本の記述をベースに、旧世界の国々でいつ頃、どこからワイン造りが伝わったのかを地図で示しました。ワイン造りが初めて伝わった年代を問われることも多いのと、旧世界は時代が古く、いろんな民族が登場するため、頭の整理に役立つと思います。
ワイン伝来マップ 〜旧世界編〜
日本ソムリエ協会教本(2020年度版)の記述をソースに、ワイン伝来マップをつくりました!
【作り方】ワイン用ブドウ樹が最初に伝わった年代を、世紀表記に統一しブドウ栽培・ワイン造り伝来一覧表にまとめました(下表)
一覧表から分かるように、旧世界では記録がほとんど紀元前に遡るため、教本の中でブドウ栽培の開始に関する記述はあまり明確ではありません。そのため、原則ワイン造りが始まった年代と伝えた民族にフォーカスしてマップをまとめてあります(教本上であやふやな記述は試験で問われることはないと思います)。
年代と民族にフォーカスした場合、2つの重要な民族に分けることができます。
・古代ギリシャ人が中心の時代(〜BC5世紀まで)→マップ1
・古代ローマ人が中心の時代(BC8世紀以降)→マップ2
これら2つの時代をそれぞれマップ1とマップ2に分けてまとめています。
なお、年代2つの民族に重なる場合は便宜上どちらかのグループに振り分けました。
ジョージアは最も古いため、どこかから伝来してきたかは問われないため、マップには含めないこととしました。
ブドウ栽培・ワイン造り伝来一覧表
国 | ブドウ栽培 | ワイン造り | ||
年代 | 伝えた民族 | 年代 | 伝えた民族 | |
ドイツ | BC5世紀 | ケルト族 | ||
オーストリア | BC7世紀 | ケルト人 | ||
ブルガリア | BC8世紀 | トラキア人 | ||
クロアチア | BC5世紀 | 古代ギリシア人 | ||
スペイン | BC11世紀 | フェニキア人 | BC2世紀 | ローマ人 |
フランス | BC6世紀 | フォカイア人 | BC1世紀 | 古代ローマ人 |
ジョージア | BC60世紀 | |||
ギリシャ | BC40世紀 | |||
ハンガリー | 記載なし | 古代ローマ人 | ||
イタリア | BC20世紀 | ギリシヤ人 エルトリア人 |
||
ルクセンブルク | BC8世紀 | ケルト人 | ||
モルドバ | BC30世紀 | ダキア人 | ||
ポルトガル | BC6世紀 | フェニキア人 | ||
ルーマニア | BC20世紀 | 古代ギリシヤ人 | ||
英国 | BC1世紀 | ベルガエ人 | ||
スロヴェニア | BC6世紀 | ギリシャから | ||
スイス | BC1世紀 | ローマ人 |
※ルクセンブルクのブドウ栽培・ワイン造りが始まった”古代ローマ時代”はBC8世紀として変換しています。
【注意】本資料はソムリエ・ワインエキスパート試験の学習のための参考資料として作成しています。歴史の勉強のツールではありません(歴史認識が正しいかは保証できません)のでご注意ください。
ワイン伝来マップ 〜旧世界編〜
マップ1:古代ギリシャ人中心(〜BC5世紀)
マップ2:古代ローマ人中心(BC8世紀〜)
ワイン伝来マップ 作成背景
各時代および、登場する民族は教本以外のソース情報(ウィキペディアなど)を元に、以下のように整理し、ワイン伝来マップ1と2にそれぞれ配置しました。
時代
ギリシャ史と古代ローマ時代
ワインの歴史において重要な役割を果たした、古代ギリシャ人と古代ローマ人を2つに分けてマップにしました。ギリシャの歴史は古く、先史時代(資料が存在しない時代)から現代まで続いています。この中で、古代ローマ時代への移り変わりの時代にあたるBC5世紀頃までをマップ1にまとめました。さらに、もうひとつの重要な時代である”古代ローマ時代”をマップ2としてまとめました。一部時代が重なりますが、ワイン伝来をわかりやすくするため、区別することにしました。
■ワイン伝来マップ1:先史時代〜BC5世紀(古代ギリシャ人中心)
■ワイン伝来マップ2:BC8世紀以降(古代ローマ人中心)
民族
ギリシャ人
教本で登場する年代で最も古いのは、ジョージアの歴史で紀元前6000年(BC60世紀)とあります。これを起源とした場合、次に登場するのがギリシャで紀元前4000年後半(BC40世紀)となります。
これらの年代は歴史上の区分では新石器時代(BC70世紀)〜青銅器時代(BC30世紀)となります。
古代ローマ時代が始まる紀元前8世紀までは、古代ギリシャ人によってギリシャ周辺地域にワイン造りが伝達されていることがよく分かります(マップ1)
フェニキア人
フェニキア人は、紀元前15世紀頃から都市国家を形成し始め、紀元前12世紀頃から盛んな海上交易を行い、北アフリカからイベリア半島まで進出し地中海全域を舞台に活躍していたそうです。また、その交易活動にともなって優れた文明を地中海世界全域に伝えたとされています。
教本ではBC1100年(BC11世紀)にスペインにブドウを持ち込み、ワイン造りをし(ワイン造りを盛んにしたのはローマ人)、さらにBC600~500年(BC6世紀〜5世紀)にポルトガルにワイン造りを伝えたと記述があります。
以上の情報から、フェニキア人が地中海での交易において、スペインとポルトガルにワインを伝えたことが分かるように記載しました(マップ1)
さらに、スペインにおいては、その後ローマ人によってワイン造りが国中に広められたことが分かるように破線の赤矢印で示しています。
トラキア人、ダキア人
トラキア人はトラキア(現在のブルガリア南部、ギリシア北部、トルコのヨーロッパ部)に住んでいたそうです。また、ドナウ川の北にあたる現在のルーマニア、モルドバ、ウクライナ中西部、ハンガリー・スロバキアの東部にいたダキア人も同族とされています。
紀元前4世紀にマケドニア王国(古代ギリシャ人によって建国された歴史上の国家)によって征服されました。
ダキア人は、紀元前10世紀頃からダキア地方(現在のルーマニア)に住んでいたトラキア系民族のことをいうようです。
以上の情報から、トラキア人とダキア人を同族としてまとめ、現在のルーマニアに場所を置きました(マップ1)
ケルト人
ケルト人は青銅器時代に中部ヨーロッパに広がり発展したとされます(下図)。
・紀元前15世紀から紀元前10世紀(青い部分)
・紀元前4世紀(ピンクの部分)
ケルトの社会は鋭利な鉄製武器を身に付け、馬に引かれた戦車に乗った戦士階級に支配され、欧州各地に分立しました。彼らは南欧の文明社会としきりに交易を行い、その武力によって傭兵として雇われることもあったとされています。
紀元前1世紀頃に入ると、各地のケルト人は他民族の支配下に入るようになります。ゲルマン人の圧迫を受けたケルト人は、西のフランスやスペインに移動し、紀元前1世紀にはローマによって征服されてしまいます。
以上情報から、ケルト人は現在のフランス、ドイツ、ルクセンブルクが重なるあたり(上記地図の青い部分)の場所に置きました(マップ2)
エルトリア人
イタリア半島中部の先住民族で、古代ローマ人と同化して消滅したとされます。
以上の情報から、イタリア中部に先住していたものとして扱いました(マップ1)
古代ローマ人
古代ローマは、イタリア半島中部に位置した多部族からなり、領土を拡大して地中海世界の全域を支配する世界帝国までになった国家の総称です。紀元前753年(BC8世紀)に建国され、伝統的には476年(AC5世紀)をもって古代ローマの終焉とするのが一般的なようです。
以上の情報から、古代ローマ人をイタリア半島中部に置きました。
また、古代ローマ人は最初にワイン造りをもたらした以外に、もたらされたワインを当該国中に広めた役割も重要です。
スペインについてはマップ1に、フランスについてはマップ2に破線の赤矢印でその事がわかるように示しました。
フォカイア人
ポカイア(フォカイア)は、古代ギリシア領イオニアの都市(現トルコのフォチャ)。ギリシアの入植者は、ここからBC6世紀ころにはマッサリア(現フランスのマルセイユ)に植民地を建設した。
以上の情報から、フォカイア人をトルコに置き、そこからフランスのマルセイユに植民地を建設した際にブドウ栽培がもたらされたことが分かるようにしました(マップ2)
ベルガエ人
ベルガエとは、ガリア(現在のフランス、ベルギー、スイス他)の内の北東部を指す古代ヨーロッパの地名です。また、ベルガエに住む部族を総称してベルガエ人(ベルガエ族)と呼んでいたようです。
以上の情報から、ベルガエ人はフランスとベルギーの中間に配置しました(マップ2)
まとめ
歴史が古くたくさんの民族が登場して、非常にわかりにくい(覚えにくい)旧世界のワイン伝来について、時代背景を加味してマップ上に落とし込むと、全体の流れが頭に入ってきて覚えやすいですね!
いろんな年代を覚えなければならないので、体系的に記憶すると忘れにくいので、ぜひ活用してください!!